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C.E〜C次元・Entertainment〜

全てはC次元の世界へ

【やってみる】もし、村上春樹が脇田もなりのインストア・イベントを観て、レポを書いたら

完璧なインストア・イベントなどといったものは存在しない

完璧なレコードが存在しない様にね。

 

新宿ディスク・ユニオンの入ったビルはいささか

ややこしい場所にあった。

 

外観だけではただのオフィス・ビルにも見えるし、

風俗店の入ったいかがわしいビルにも見える。

 

少なくとも、レコードの売っている店が入っている

ビルには見えなかった。

 

エレベーターのボタンを押し、3階へ向かうが

この時点でも僕はこのビルにレコード屋が入っている事を疑っていた。

 

扉が開くと同時に洋楽がスピーカーから流れてきた。

 

僕はその光景にひどく混乱したが、次第に

【ここは】レコ屋だという感覚を取り戻していった。

 

レコードで埋め尽くされた店内には、ひときわ目立つ

ポスターが貼ってあり、彼女はグレーのTシャツを着て、腰に

チェック・シャツを巻き、その美しい瞳で【こちら】を見ていた。

 

MONARI WAKITA 

 

僕はその名前を反復した。

 

人で溢れ返った日曜日の新宿東口に好き好んで来たわけでもないし、

欲求不満の人妻のガールフレンドと待ち合わせをしているわけでもない。

 

僕はMONARIに会いに来ていた。

 

そして、それは、ここにいる

ほぼ全ての人に言えるだろう。

 

イベント40分前にステージ前の位置についた僕は

周りのファンを見ながらそう思っていた。

 

MONARIが到着するまで、僕は文庫本を開き

(今日中にどうしても読み終えたい作品があった)

途中、ペットボトルの水を3回飲んだ。

 

文庫本に集中していたせいか、ふと辺りがざわついた。

 

赤いロング・トップスを来た

MONARIがサウンド・チェックの為、ステージに現れた。

 

マイクの音量とサウンドの出音を確認していたが、

度々、ハウリングが起こっていた。

 

シールドを入れ替えしながら、少しずつ音が良くなっていき

最終的にとてもクリアな音になった。

 

僕は「成る程」と思った。

 

途中、MONARIが僕のほぼ隣に移動し、サウンドチェックの

様子をうかがう場面があった。

 

ファンとの距離が近い為、MONARIもいささか戸惑っている様子だったが、

その笑顔はビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』のピアノの

音色の様に美しかった。

 

MONARIはステージを離れ、ファンは再び待機し始めた。

 

僕は回りの壁を見渡すと、ビートルズ

【プリーズ・プリーズ・ミー】が壁にかけれている事に気付いた。

 

そのレコードは僕が大学生の頃、

同い年の女の子が教えてくれたモノだった。

 

丁度、僕が入学して3番目に寝た女の子だ。

 

今日みたいな晴れた日曜日だったと思う。

 

僕のアパートにその女の子は訪ねてきて、

「お昼食べてないんでしょ?」と言うと

勝手にプライパンを使い、買ってきた材料で料理を始めた。

 

野菜を水洗いし、肉を包丁で切り、油の引いた

フライパンへそれを投げ込むと慣れた手付きで炒めた。

 

途中、塩・胡椒・醤油などを入れ、それを大皿に

盛り、僕がいるテーブルまで運んできた。

 

買物袋から、彼女は缶ビールを取り出し、

僕等は乾杯をした。

 

食べ終わると僕等はほろ酔い気分の中、

彼女が持ってきた【プリーズ・プリーズ・ミー】をかけた。

 

最初はお互い、ジョンとポールどっちが好きだとか、

リンゴ・スターのスネアの音は他と全然違うなどと話し合っていたが、

ふいに彼女が「ねぇ、これ聴きながら<アレ>しましょうよ」

と言ったので、やれやれ、と思いながら、僕等はベッドに移動した。

 

そんな事を考えていると、13時になり、

黒のキャップを被ったMONARIがステージに登場し、

イベントが始まった。

 

クラップをする彼女に合わせ、手を叩くファン。

 

僕もいつの間にか、3番目に寝た女の子の事はすっかり

忘れ、手を叩いていた。

 

曲は【IN THE CITY】へ移った。

僕がMONARIの曲で一番好きな曲だ。

 

曲を聴きながら、目を閉じると

夜中、MONARIと二人、渋谷から横浜方面

(中華街がある方面かも知れない)を車で飛ばしながら

深夜のドライブをしている様な感覚に陥った。

 

しかし、目を開けるとそこは夜景が見える場所ではなく、

新宿東口の雑居ビルのレコ屋の中、パフォーマンスをする

MONARIの姿があるだけだった。

 

僕は頭がおかしくなってしまいそうだった。

 

ライブはあっという間に3曲目に入った。

 

【__Boy Friend】

 

その英単語をコール&レスポンスし合う。

 

でも、MONARIの【Boy Friend】にはなれない。

そんな儚さを幾分感じながら、僕はサウンドに身を委ねた。

 

曲が終わると、MONARIは笑顔の中、楽屋へ戻っていった。

ファンの拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

 

イベントが終わり、ビルを出ると

【確かにここには】レコード屋があり、

僕はMONARIに会いに来た事を実感した。

 

隣の紀伊国屋書店では

【騎士団長殺し】と書かれた本が大量に

プロモーションされていた。

 

僕はMONARIとの時間の余韻に浸りながら、

通りを渡り、文庫本の続きを読むため、DUGの階段を降りて行った。

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 

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